おでん

(長文(くだらない)注意!)
 最近は放送に気合いが入らない代わりに日記だけでも毎日書こうと思ってるんですけれども、先週も、そしてきのうも日曜に書き忘れてしまいました。日曜って、なんかそんな曜日なんですかね。僕は人並みに休日として日曜を過ごしているのでもなければ、テレビもほっとんど見ないので日曜日もなにもないはずなのですが、どうしたことでしょうね。
 とはいえ書くことがないのもまた事実です。申し遅れました、私、マリファナ商会のPと申します。フェアトレードの安全な商会です。お一ついかが。
 いらない。ああそう。じゃあ一つ、失礼します。チャキンジュポッ、スーー、ふう。
 というわけで書くことがないんですね。なら書かんでもって言うかもしれないですけど、僕は何か「核」があれば、芋づる式にいろいろと出てくるので、要するにないと思ってもなんだかんだで出てくる人間、のはずなんです。
「核」というのは僕は雨とか雪の核のイメージなんですが、雪とかっていうのは、水の結晶が周りの水蒸気を吸って徐々に成長していく、という感じで出来ていくのですが、そのきっかけとなる、水とは別の粒が、必要になるんですね。
 ただそれはきっかけに過ぎないので、ほんの小さな、それこそ自動車の排気ガスのススでもいいし、黄砂みたいな砂にも満たないホコリでもいいしおっさんの鼻毛でもいいわけです。
 おっさんの鼻毛上空何千メートルでなにやってんだって話ですけど。そのようにして出来上がった雪が落ちてくるわけで、東京みたいにべた付いたすでに融けかかった雪しか落ちてこない地域でなく、ほんとに粉雪みたいに零度以下のまま落ちてきたものを、そのまま顕微鏡に乗せて見てみると、その核になった粒が、自動車の排気ガスのススが、黄砂みたいな土埃が、そして縮れたおっさんの鼻毛が、観察されたりする、らしいです。
 だからおっさんの鼻毛、どんだけの飛行力持ってんだって話ですけど。
 まあこの話は、そんな風にきっかけさえあれば、そこからなにかしらの話が出てくる、ということが言いたかったのと同時に、実際それをやってみて「雪の出来かた」を思い出した、という実践でもあるんですけど。
 どちらにしろ、話題なかったらそういう苦し紛れをネジネジひり出しますけど、今日は割とあるんですね。まあもちろん対したアレじゃないですけど。
 近所のローソン、それも「歩いてまあまあ近い便利なローソン」ってレベルじゃなく、同じ町内会に属してて、回覧板がうちに回ってきたら次はそのローソンだ、ってくらい近いんですね。豪雨でも走れば大丈夫なくらい。
 な近いローソンなので、よく使うっていうか何だか申し訳なくて使わざるをえないんですけど、そのローソンが今おでん全品七十円均一のキャンペーンやってるんですね。
 話は逸れますけどそのローソン、仮にUさんが経営してるとしますが、このUさんってこの街牛耳ってんの? ってくらい同じ名字の人多くて、しかもけっこう豪邸率が高いんですね。
 つまりうちの近所歩いてたら、なんかでかい家を発見して表札見たらUさんだったの割合が相当なんですね。
 そんでそこのローソンもUさん所持なんですけど、なんか家族みんなでやってるらしくて、まず奥さんらしいUさん、そして何年前かな、数年前くらいから見かけるようになった、娘さんかな? ってくらいのUさん、そしてつい最近から見かけるようになった、同じく娘さんっぽいけどそしたら次女かな? って感じのUさん、がみんな代わる代わる働いてるんですね。みんな名札一緒で、どうやって呼び分けてるの? って感じですけど。
 もっともさっきの牛耳ってるの? 理論でいえば、他の家から働きに来た別のUさんである可能性もありますけど。しかしあんな豪邸ばっかに住んでるUさんの娘さんが、わざわざバイトに来る? やっぱりあれは家族だ。
 以上余談ですけど、ほんらかんりの、ほんらか……、ほんら……。
 すいません、さっきのマリファナが頭回ってきたみたいれす。深呼吸して追い出しますね。
 すぅー(ビョインビョインビョイン)、はぁー(チカチカチカ)。
 幻覚まだ、消えないですけどいいですね別に。というわけで、そんな感じのローソンで売り始めた、七十円均一のおでん。Pさんドの上にクソが付くほどのクソドケチなので、それに飛びつかないわけにはいかないのですね。
 こうして改めて見てみると、おでんって値段がさまざまですね。この状況でチクワブだぁ!? ハンペンだぁ!? 誰が買うかっていうんで高いの高いの高いのって目が勝手に追ってくんですけど、まずトップが一串二百円! の「ツブカイ串」。貝柱です。
 これ、行かない手はないんですけど、みんな同じ事考えるもので、頼んであった試しがないんですね。
 そういうとき店員さん、「もしかしたらPさん今ツブカイ串しか食べたくないのでは」モードで接客して、非常に申し訳なさそうにしますよね。とおんでもない。僕は別におでんの貝柱が特別食べたいとかそんなじゃぜんぜんなくて、っていうかふだん二百円で売っててその割に貝柱? 別にいいんですけどってかんじなんですけど、それが半額を遥かに凌ぐ値段になってるから白羽の矢を立てたのでありまして、もしその場にないなら他のやつでもぜんぜんそれはお得なんで構わないんですけど、っていうあえて言えばケチ丸見えの本音を少しでも店員が掠め見たならば、もっと楽に接客できるのにな、といつも思います。接客って、いつもワーストに照準合わせますよね。
 また話逸れましたが、なわけでいつもあきらめるツブカイ串の代わりに頼む事にしている、おいしいアンド百五十円の大台に載ってる「牛タン串」、これを今日も、って昨日ですけど、買ったんですね。
 牛タンはそもそも僕の焼き肉の定番で、とは言ってもそうそう行かないんですけど行ったときに好き好んでたべるのが牛タンで、粗挽きコショウまぶした牛タンにレモンかけて食べる牛タンとか、最高ですよね。あと焼き肉で思い出深い食い物といえば「ニンニクの丸焼き」なんですけど、これは別の機会に譲りたいし今、話すべき事は焼き肉の牛タンではなくおでんの牛タンでしたね。
 そうそう、焼き肉の牛タンは焼くことによりひたすらプリプリした食感の牛タンですが、おでんは煮てある程度フヤフヤにふやけた牛タンなんですね。でも牛タン独特の味は当然残ってて、どうにも不思議な味というか食感というかその組み合わせです。
 ここで想像していただきたいのがおでんを買ったときの構造ですけど、まず牛タンの角切りみたいのが串刺しになってるのは分かると思いますけど、それを発泡スチロールの容器に汁と一緒に入れて、さらにそれをレジ袋に入れますね。え、なにそれ当たり前じゃんと思われる向きもあるかと存じますが、あとでこれ全部生きてくるので、伏線なので留保しておいてください。
 そんでそれらを他に買ってきた食品と一緒に持ち帰って、食べるわけですけれども、みなさん串のものって、どう食べますでしょうか。食べる対象(ターゲット)は当然串の一番手前(握りから一番遠い粒)のものになりますが、食べる度に一粒ずつ引き抜いていって、他はノームーブ、っていうのと、一つ食べる度にそれぞれ一個ずつずらしていって、食べるっていう二通りのやり方が考えられますね。異端的作法としてはあらかじめ全部串から外しちゃって汁の中にドボンするっていうこともあるにはありますが、それじゃわざわざ串にしてる意味がないので、あくまで異端ですね。
 その中で僕は、「ちょっとずつずらし食べ」のやり方で食べていました。思えばそれが、すべての元凶だったんですけど。
 そしておでんだから、串ごと汁の中にドボンしてて、そのままつかむと手が汚れるから、割り箸で食べてたんですね。棒で棒をつかむのって、かなり不安定になりますよね。思えばそれが、すべての災厄の根源だったんですけど。
 そうとは知らず僕は汁の中でいつもと違う顔を見せている牛タンに舌鼓を打っていたんですね。箸で串の根元の方を持って、牛タンをつかんで、尖ってる方に向かって押し出しながら。
 串の尖ってる方って、細くなりますよね。したがって、今まで押し広げられてた串の口径より緩くなるので、牛タンの角切りが落ちやすくなるのがおわかりいただけると思います。
 抜け落ちました。
 ここで今から考えれば箸を使って取って食べればいい話なんですけど、何事にも几帳面な僕は、「串なんだから、牛タンは串に刺さってる状態で食べたい」とでも思ったんでしょうか、抜け落ちてしまった串をつかんで、その牛タンを刺し始めました。思えば、それがすべての悪運の始まりだったんですけど。
 刺さりました。
 刺さりすぎました。
 その時僕は気づいてなかったですが、発泡スチロールの容器は想像以上にゆるく、牛タンを貫通した串がさらにその奥まで、発泡スチロールの壁まで破り抜いてしまったんですね。
 引き抜こうとしたときに妙な抵抗を感じたので見てみたら、容器の下の壁から、将軍の喉笛を貫き皮膚を破いて出てくる槍の頭よろしく、串の先が頭を出してるわけです。
 将軍は即死だから気楽なもんだけど僕はどうにかしなきゃいけないわけですが、ところで汁は一滴も下から漏ってはいませんでした。なんか知らないけどでかした。でもまさか、「刺さってる串がちょうど栓になってふさがってる」パターン?
 そんなうまい具合に、本当になってるだろうか、と僕はなぜか訝りました。演出上、さっき容器の下から串が突き出てるのをまるで直接見たかのように書きましたが、実はそれは違って、容器の中から、半透明に黄色く透けるだし汁を通して、串が壁に「刺さってる」のを見ただけでした。
 これは貫通していない可能性がある。
 たまに出てくるPさんのオプティミズム(楽観主義)が顔を覗かせました。だとすればこれを引き抜いても汁はこぼれないし、すべてが無事に済む。
 たとえ引き抜いたさい穴が開いてたとしても、なんか空気圧と表面張力の関係で、汁出てこずに止まるんじゃないか。
 たとえ出てきたところで……。
 引き抜くと想像の五倍の勢いで出てくるだし汁。同じく想像以上に熱かっただし汁が左手の薬指と小指の間をすり抜け、畳の上に。思わず投げ落としてしまった容器から勢いよくこぼれるだし汁が畳の上に。
 しかし運良くその下にはさっきから敷いていたレジ袋があり、継続的な漏出は何とか避けることが出来ました。
 すかさず何枚かのティッシュで堤防を作り、敷いた(つまり袋状になっていない)レジ袋の決壊による二次災害を防ぎつつ、とはいえすぐになくなるほどの勢いで出てきてるわけじゃないので、ヒョイッと持ち上げては味わうとか関係なくゴクゴクだしを飲んでいって、無事にすべて、飲み終えることが出来ました。
 ふと見ると乾ききった牛タン。この状態で食べる牛タンは、さすがにおいしくなかったですね。
 そして左手の中指と薬指の間の股は、未だにヒリヒリします。しかしPさんの命に別状はないそうです。
 これ、携帯のメールで書いたんですけど(携帯でこの長さ!?)、残り文字数が800といくらかで、つまり全部で9000文字打ったわけですが、これだけの日記書いたのも、携帯で文字打ったこと自体も、はじめてのことです。それにしちゃ全く、取るに足りないことだったですけど。もし読んでくださった方、いたとしたらですけど、本当にありがとうございます。次は簡潔にいこうと思います。