睡眠導入剤

 きのうは、はじめて睡眠薬を飲んでから眠った。
 本当は睡眠薬ではなく、睡眠導入剤なんだけど、「睡眠薬」という単語があまりにしっくり来すぎて、ついそれを使ってしまう。
 きのうは休みで、今日は早番で、さきおとといは早番なのに七時に起きてこれは完全に遅刻だったので、それはもう繰り返したくないので、これからより強力な目覚まし時計をつけるとともに、きっかり寝なきゃいけない時間に眠れる何らかの措置を採るということを、周りからは何も言われなかったけれども自分の中でだけの反省点として、きちんと決めたところだった。
 その策の一つが睡眠導入剤を飲んで寝てみるということだった。しかし常用するつもりはなかった。こういうたぐいのものは、いったんクセになるともう止められなくなると思ったからだった。
 というのは別に、眠る快楽を直接薬から得ようとかいう意味でクセになるわけではなくて、コーヒーと同じで、自分の覚醒/睡眠のリズムを、もはや自分の体だけでは律することが出来ずに、薬を使わずには律することが出来なくなる虞れがある、ということだ。
 げんに、コーヒーにおいてはすでのその弊が出てて、今やコーヒーを飲まなければ、朝は立っていても居眠りするかもしれないくらい眠くなる。
 というわけで、常用する気はさらさらないけれども、それでも体験として、どれだけ眠くなるものなのか、試してみたいというのもあった。
 それで薬局に睡眠導入剤を買った。もちろん本場の「睡眠薬」は、まず医師に必要性を認められなければ、使うことが出来ない。
 それでもふだんはそのガチの睡眠薬を服薬させる立場にいるので、ぜんぜん抵抗みたいのはなかった。
 薬局、まあマツモトキヨシのことだけど、に行ったら、かろうじて三つの睡眠導入剤が見つかった。
 一つは、「睡眠導入剤」というジャンルが出来てからはじめて製品として市場に出てきた「ドリエル」。
 もう一つは、その「ドリエル」の錠剤バージョン。前の「ドリエル」は、カプセルに液体が入っているバージョンだった。
 そして三つ目が、「スグネムレールα」みたいな名前の薬だった。
 そのうち、一つ目の「ドリエル」が、なんていうか銀色に反射する外箱に、青いフィルムがかかっていて、なんとも言えず美しかったので、これを買ってしまった。
 今注意書きを見てみたら、やっぱり「連用すべからず」みたいなことを書かれているので、いずれにしろ常用するわけにはいかない。
 これを、きのうの九時頃飲んだ。十時になっても大して眠くならなかった。ちょっと眠くなったかな、くらいだった。
 これで、六錠で2000円とは。バカな買い物をしたけど、やってみなければわからないこともある。
 しかも後で調べてみると、この「ドリエル」に入っている成分は、この値段で売るには、いくら卸値とか考慮してもあまりに高すぎるらしく、その証拠に、ほぼ同じ成分を持っている「レスタミンコーワ糖衣錠」という薬は、瓶詰めになってるひどく安い薬で、要するにそれを飲んでおけば「ドリエル」と同じ効果、ちょっと眠くなるかな、くらいの眠気がおとずれてくれる。
 もちろん常用する気はないけど、こんどもし買うとしたら、こっちの方を買おうと思う。