水虫

 なるほど、公共のシャワーを使うのは常に危ない。なんとなく運動後にシャワーを浴びることにあこがれていたので、ジムに行った後は必ず更衣室の横に、なんのしきいもなしに開いているシャワー室を使うのが習いになっていたけれども、どうも左足の小指の股が水虫っぽい。
 前も仕事場で「どうやら水虫がうつった」と思い込んで中途半端に薬を塗っては気がついたら忘れていたけれども、その塗っていた期間はたった数週間かそこらで、本当の水虫ならたったそれだけで治るわけがない。中学の時には本当に水虫になったのでわかる。だからその時は「杞憂水虫」だった。きっと今回も大方「杞憂水虫」だろうけれども、あのムサい学生がいつもタムロしている更衣室で、水虫が静かに蔓延している可能性は相変らず消えない。
 今日は特になにもしなかった。何の用事もなく(決して今日が月曜と勘違いして、アテネ・フランセに映画を見に行こうとしたわけではなく)、水道橋やその辺をブラついていた。
 そこの Disc Union で、僕が今本当に欲しいものが手に入った。

 僕がはじめてインターネットでこの曲を聞いた時、Squarepusher はついにこんな音を得てしまったか、と思った。それ以前に、「歌を担うことになったシンセ」という僕がかねてからずっと考えていたことに、新しい形が与えられたと思った。
 いや、ある歌がここにあるというだけにとどまらない、ある一つの生物がそこに住まっている。それは一度にたくさんのことを喋ろうとするけれども全く言葉にならず、ただ虹のような声でうなることしか出来ない。