職場の連絡先を知らない

 職場の連絡先を知らない。職場から掛かってきた電話番号を履歴で辿ってそこにいつも掛けているのだが履歴が遠いとどれが職場の番号なのかわからなくなる。自宅と恋人と職場の電話番号くらいなら暗記しているが他は電話帳から引かなければ電話を掛けることが出来なかった時代の人間だったら覚えられていたのかとも思うけれども恐らくその時代にいても自宅と恋人の電話番号は覚えていても職場の電話番号は覚えていなかっただろう。逆にどんなにスマートフォンのメモリが電話番号を記憶する時代になっても覚え続けている自宅と自分の持っている電話の電話番号という、自我の持つ特別感が感触として際立つ。コーラを飲んでから散歩に行く。マラソンする前に(戦闘前だったか)コーラを飲むことを半可通の男がバカにするのを見て「いや、これは理にかなった行為だ。コーラには大量の糖が含まれていて身体に糖を一気に入れる為にはコーラを飲むのが一番いいんだ、実は」という話を半可通よりは幾分かスポーツに詳しい半可通が話している、というエピソードを板垣恵介のマンガで見たことがある。コーラを飲む度に頭をよぎる。もちろんそこでコーラをがぶ飲みしている(真実を知る)人間は主人公だ。自我の特別感が目立つ。