オリーブ

オリーブはしばらくむっつりと草も生えていない荒れ地に立っていた。五月、半数ほどの木に、小さな枝芽が出た。六月、小さな線香花火のような淡黄色の花が咲いた。七月、それはエメラルドのような深緑色の、びろうど地でつくったような、やわらかな手ざわりの小さな実となった。

 オリーブの実が生成する過程を、これほど的確に表現した人があるだろうか。サブウェイでは、「オリーブ抜きで」と注文する人すらいるにも関わらず。私なぞはサブウェイの野菜増減では、ひたすら「オリーブ多めで」と言うのみなのだが、他の野菜を減らすことにより、オリーブの嵩がより増しはすまいだろうか、などと画策する程オリーブには思い入れがある。もちろん、サブウェイで使用する野菜は全てに基本値があり、レタス何グラムに対してパプリカ何グラム、これが何のオーダーもない場合の量であると、決められているに違いない。それを、オリーブを増し、あまつさえレタスやその他、私のきらいな野菜を減らしてまでさらに倍加させる、などということは、およそ店員にとっては考えることすら出来ない、悪魔の所業だとすら言えよう。ここで言っているのは食べるオリーブのことではない。精神病院の病棟の庭に植える並木のことだ。シュンシュン音と共に放たれる火のような花や、にこ毛の生えたツルツルの実などは、それが増減されるかされないかという判断の埒外にあると、想定せざるを得ない。