夏目漱石には何の怨みもないが……

 一つのマンガは衝撃を受けるようなマンガは初めは内部の空間どおりに感じる。二回目に読むと空間はコマ割りと視覚に転じる。言葉はそのままでそのまま違う空間に平行して流れる。言葉はロゴスとは言うがほとんど本能に近い。考える余裕のない人達の代りに考える余裕のない僕が考えなければならない。考える余裕のない人達は考える必要すらないと思っているのかもしれない。人は考えざるを得ずそれは本能に近い。考える余裕のない人々にはそこに真綿が詰められている。しかし意外にも人形の綿が袋を破り出て来てしまった時に人は何か見てはいけないものを見てしまったかのような感じを覚える。綿をいったん全て抜いてみて、そこに本当は何が入るべきだったのか、試してみるとよいだろう。じっさい夏目漱石ニューロンには何ら異常はなかったと脳のスライスを観察したすえ結論づけられた。スライスにはどういう具合か三日月状の間隙が生まれ、奥さんはそれを見て「美しいですね」と言ったそうだ。それがどこをどう伝って、翻訳に関するあのような伝説になったものだか……。