こないだ突然降って沸いた低気圧がついに桜を散り尽くさせた

 フランスの歴史を調べるのが面白い。フランスがフランスになった過程がわかる。フランス人にどんなトラウマがあったのかを知らずに、やれプルーストフーコーだ、ラカンだブランショだのなんのと言っていたのを後悔する。といってもここで別に言っていたわけでもなかったけれども。フランス革命は起ったけれども革命であった時期は短かった。それはそうだ。大貧民、地域によっては大富豪と言ったりもするけどそのゲームでも革命は中盤以降に行なわれるしそうでないと意味がなく、革命している時にはなんとも言えない浮遊感がそのルールを被った人々の間に流れ、そしてほどなくそのターンは終了して次のブルボン復古王政に引きつがれてゆく。しかしいったん「くつがえりうるものだ」と知ったあとで見る王冠はその輝きが違っただろう。日本を巨きく覆ってまたたく間に去っていった低気圧。その間に桜なんか散り尽くしたけれどもその代わりに立木には目映いばかりの新緑が輝いていた。それは陰影を基とする反射色の景色ではなく透過色の景色だった。それを認識するには西洋のゴテゴテした塗りは似合わず、日本の描き方のほうが適当だろう。誰もその当の場面を見たはずのない、革命が頂点に達したすえルイ16世が人民にしょっぴかれる瞬間の絵画が存在する。まるで撮影所の暗室にスポットライトを当てたような陰影だった。西洋ではそういう描き方が標準となり、まるでそれが最終的にリアルであるかのようなツラをしているけれども別にそれがリアルであるわけではない。それは撮影所の暗室のリアルだ。