閉ざされた牒々亭

 きのう郵送で届いた牒々亭(1.6帖のレンタルスペース)の鍵を持って、遅番で余裕のある朝に、そこに向かった。
 二階部分には階段はついていなくて、台車のついた可動式の階段をそこまで自力で運んでいく。
 これがなかなか重くて、方向を定めがたい。まっすぐ押しても、下の車輪の向きに、慣性のように引きずられて、あらぬかたに進路を取り出す。
 それを苦労して、自分の借りた二階部分の扉の真下にセッティングする。
 車にストッパーが付いてはいるものの、全方向に動かせる車輪は、横にグルグル回るようになっている。それが一歩一歩足を踏みしめる度に、グラッ、グラッと来て、まるで吊橋を渡っているかのようにヒヤヒヤする。それが楽しくもあるんだけれども。
 それでついに、鍵を差し込んで、ドアノブをひねったんだけれども、これが全然開かない。
「もともと開いていたのかな?」と思って、カチャッて言うまでもう一度鍵を回して、またドアノブをひねってみても、まだ開かない。
「逆にひねらなければ開かないのか」と万が一のことも考えて、試してみるけど開かない。
「押して回す式のこれはやつか?」と、もうまるでありえないことまで考慮に入れて試してみるが、それでも開かない。
 マゴマゴするうちに出社時間も近付いてきたので、その場を去ったけど、その日一日、その出来事をスタッフやらお客さんやらに話す持ちネタにしていた。
「この間、うちに本を置き切れないから、貸しスペースっていうのを借りたんですね? それで……」