川原でボレロ/脳Pod/初給料

 今日という休みは一日中、自転車をあちこち漕いで過ごした。マジで。
 僕の言う一日中自転車って、本当に一日中自転車だから、見た人はたぶんビックリすると思う。しかも今日は目的なく、いや目的はなかったわけじゃないけど、実に微々たる理由でひたすら自転車を走らせていたので、見た人はたぶんビックリすると思う。
 まず、昼頃に高島平のすぐそばにある橋に写真を撮りに行った。
 それから引き返すように、光が丘公園を横切って、大泉学園駅の方まで行き、大泉図書館で、光が丘図書館で借りたCDを返しに行った
 本当はいつ返しても良かったんだけど、前の暇な時とは違って、次の休みを待っていたら、すぐ超過してしまう。で、練馬区の図書館はほとんどが月曜休み。そんななか、大泉図書館は、第三月曜日だけはやっている。今日は、第三月曜日。
 というわけでわざわざそこまで行って返した。本だったらポストに入れとけばいいけど、CDは同じようにしたらすぐ壊れる。
 で、実はそれから、またまたさっき行った橋にもう一回行って、夜のその橋を撮る予定だった。
 でもさすがに時間に無茶が生じて、CDを返した時点で、十八時を切っていた。うちの近所である光が丘に戻った時には十九時になっていたので、もうあきらめてドトールに入って本を読みはじめた。読みはじめてからすぐに席で寝てしまった。十分くらいで起きたけど永劫のような気がした。
 そんな、今日一日の流れだったけれども……



 橋の写真を撮った後で、川原に座ってカリンバの練習をした。そろそろ、限界を感じはじめている。
 限界というのは別に、今ある技術から全く伸びないんじゃないかという不安ではぜんぜんないけれども、僕が最終的にイメージする、普通の他の楽器とタメを張れるような点まで至ることができるかという意味で、つまりこれから順当に、今までやってきた楽器がうまくなるのと同じようにうまくなっていくことは、たとえばテンポ50でしかできなかったものを60とか70とか、あるいはなんとか100まで高める、みたいなことはできるけれども、ある瞬間に質的な変化が訪れないことには、見た目通りの「子供がたわむれに使う楽器」「民族楽器で、聞いていると心が休まる音だから、弾かれる楽器」にとどまってしまう、という危惧を抱いた、ということだ。
 それは考えつつもとりあえずは決めた目標に向かって、つまりずっとやっている「ボレロ」を練習した。ここは川原というよりは河川敷で、この川は西から東に流れていて、家から北上して来るので南側の河川敷に接することになるけど、なぜかこの河川敷は南側だけとても分厚くて、野球場を入れてもまだ余りがある。その一番こちら側のヘリ、つまり増水した川をせき止めるために一番高くなっているところに、腰かけた。はじめに腰かけようと思っていた位置には、この道は犬の散歩道としてよく使われるらしく、きれいな芝生に犬のウンコがちらばっていて、びっくりした。
 すぐに寒くなったので、図書館に向かった。


 今日は音楽の話はナシ! と思ったけど、ある。
 今日運悪くポータブルプレイヤー(本当はプレイヤーじゃなく、mp3を聞くこともできるmp3レコーダーなんだけど)を家に置いたまま出てしまったので、自転車にあれだけ長く乗っている間、なにも聴かずに走ることになった。
 普段であれば、「これだけ長く走るから、今日はこれとこのラジオを入れて……」などと計算するくらい、聞くものにはこだわっているのに。
 というわけで初めは絶望的状況だと思ったけれども、次第に脳がその代りをするようになった。
 僕が密かに「脳Pod」と呼んでいる機能はかなり優秀で、無意識がその場に合った曲を選んで、頭の中に流してくれる。
 たまにこんなことがある。雨の日歩いていたら、なぜか頭の中でクワタの「TSUNAMI」が止まらない。ずーっと歌っているので、流れるまま歌詞を追っていると、「思い出は、いつの日も、雨」と。
 これは実例じゃないけど、急にある歌が浮かび上がってきて、歌詞を追っていると突然今置かれている状況が反映されている、ということがよくあるのは本当で、無意識のチョイスというのは本当にしっかりしている。
 けれども今日はそこまでしっくりくる曲はほとんどなく、最近しつこく聞いている曲ばかり流れた。


 今の仕事をはじめてから、一ヶ月と十日。あと五日で、はじめての給料日がおとずれる。一体なにを買おうか……。
 スキャナー、DAWソフト、もう一台のカリンバ、モバイル回線の契約、本を買いあさる、……
 というのは置いといて、お給料もらえるほど働いている気がどうしてもしない。今だにやることを先輩の指示をあおいで動いているような状況なので。