「アルルの女」/飲み会/カリンバの練習

アルルの女 (岩波文庫)

アルルの女 (岩波文庫)


アルルの女」を読み了えた。
D
 この曲を含むビゼーの同名組曲で名高い、アルフォンス・ドーデーの戯曲。1872年作。
「カラマゾフの兄弟」とほぼ同時期らしい。
 作曲家ビゼーの曲と、戯作者? ドーデーの作品の関係だけれども、やはりまずクラシック音楽としてよく知られているし、戯曲の中で、上掲「ファランドール」としてよく知られる「3人の王の行列」という曲と踊りは、実に印象的にフィーチャーされている。
 どちらかというと、組曲>戯曲?
 話はごく簡単な色恋沙汰で、とある田舎に住む若ダンナ、フレデリが、都会「アルル」で知り合った女に恋してしまう。伯父で船長(船頭《かしら》から船長になり、船頭《かしら》と呼ぶと怒られる)のマルクがアルルによく出入りする関係から、その「アルルの女」について身辺調査をするが、なんら後ろ暗い点は見つからなかった。
 ところがある夜判明したことにはこの「アルルの女」はいわゆるズベタで、フレデリや伯父、やもめの母親や使用人長のバルタザールなどで夕餉を楽しんでいると、突然車夫が殴り込んでくる。聞けばアルルの女と密通していて、絶対に渡さないと言う。誇り高いフレデリは、そんなあばずれを相手にするのはやめて、アルルの女を車夫に渡した。互いに、実におとなしい紳士的なやりとりだった。
アルルの女」の語感は、日本でいったら、「東京の女」のようなものだと思う。それか、アルルは港町だから「横浜の女」?
 しかしフレデリは、どうしてもアルルの女のことを忘れられない。見る見る痩せ細っていく。その様子を見て特に母親が、こうなっては息子が死ぬよりはと、アルルの女を意地づくでも捜し出して、息子と結婚させて見せると伯父や祖父、バルタザールに相談する。そんな話し合いをしているところにフレデリが通りかかって、「え、なに(笑)、そんなマジに取ること? なんか家族会議みたいになってるけど、そんな真剣ぶられたら、本当に生死がかかってる問題みたく思えてくるじゃん。
 なら、俺いいよ。昔なじみで、器量はイマイチでも性格の良いヴィヴェットと俺結婚するから。それで万事OK? ライ?」
みたいなことを言って(もちろんヤセ我慢)、たしかに、本人がいいならそれで万事OKだから、スイスイと婚約まで進む。
 続きは読んでのお楽しみ。
 最初から最後まで、くだんの「アルルの女」は出て来ない。都会の女であること、身辺には特に怪しい所はないこと、車夫と密通していたこと以外には、なに一つ、名前や容姿すらわからない。
 じゃあこの劇で一番印象に残る人物はというと、主人公のフレデリは、途中から苦悩しはじめるところなどはハムレットにクリソツで、恋に狂うのなんのといっても実にペラいもので、そんなに濃い人間じゃない。
 他に主要な人物はバルタザールとマルクだけれども、共に老人で、鴫や鷺を猟銃で狩るのが趣味のおじさんでしかない。
 ヴィヴェットも、そばかすと三つ編みでも似合いそうな、ベタな「良い子」でしかないように見える。
 意外にも、作者の意図は知らないけれども、一番印象に残ったのは、息子の衰弱に一喜一憂する、ローズ・ママイ、フレデリの母親だった。
 中盤で、割と驚いた「(密通していたとわかっていながら)息子とアルルの女を結婚させる」という提案も、この母親からなされたし、その後にも印象的なモノローグがいくつもある。単なる嫉妬する女(ヴィヴェット)よりも、屈折していて、複雑なものが含まれている。
 だがしかしそれよりもなお、よりいっそうの魅力を含むのが、戯曲の場面と「3人の王の行列」「馬のダンス」などのメロディの関係だった。
 人物、と言うより人間といった方がわかりやすいが人間一人の持つ時間のスパンはたかだか八十年かその辺であるのに対して、古いメロディはヘタをすれば数千年も遡る。
 ドーデーやビゼーの時代と、「3人の王の行列」、「馬のダンス」この三つの異なる時間、空間をつないだ Remixer の仕事は、はなはだ佳きものと言わねばなるまい。


 木曜日に、仕事場の飲み会にはじめて参加した。
 誰が見てるか(これから見ることになるか)わからないので、うかつなことは書けない。
 居酒屋でもいいけど、そういうのも飽きはじめてきたし、安上がりな上にカレーの食い放題もあるので、ファミレスでそこそこビールなどを頼みながらの歓談になった。
 でも仕事の話がほとんどで、特に個人的な話をしたり聞いたりしたわけではなかった。
 おまけに、ようやっとなじみはじめてきた先輩方のうち三人が、四月までにフロアの異動になることを、その日に聞いた。


 日記によると二月の六日に、給料日を待ち切れずに買ってしまったカリンバの練習を、休みの日を中心にやっている。

 とはいっても実質練習したのは三日かそこらで、三日ボウズだったらここらがやめどきだけれどもようやく手になじみはじめて面白くなってきだした頃合いである。
 初日やその次などは、とりあえずいろんな(白鍵だけで演奏出来そうな)メロディーを、気ままにポロポロやっていただけだけども、今日メロトロームを買って、かつて吹奏楽部で練習したのと同じように、正確にリズムを計って練習するようにした。メロディも、ラヴェルの「ボレロ」の一部に焦点をしぼった。
 音の飛躍がそれほどない上に上から下までスケールをなぞるような音使いが、慣れない楽器にもってこいである。
M. Ravel - Bolero(in progress) by P-ziq on SoundCloud - Hear the world’s sounds
 どんなもんでしょうか。