ブックストッパー(2)

 ナンバリングがおかしなことになっていますが、ともかくどうもこんにちはPです。
前回までのあらすじ:
 ブックストッパーを買う為にわざわざ神保町くんだりまでやって来たPさん。目当ての三省堂書店の三階、文具売り場をブラついていたら、それらしきコーナーを発見。よく探そうと思ったら……。


「へえー、こんなしおりがあるんだ、かわいい」
「俺はもっと可愛いしおり(相手の名前)のことを知っているけどね」
「ブックカバーって、こんなちゃんとしたのあるんだ、知らなかった」
「俺はお前の人生をずーっとカバーしていこうと思ってるけどね」
「本読むためのライトなんていうのもあるんだ。ほしいなー」
「俺はお前に出会えたおかげで、人生が明るく照らされているけどね」
 なんて会話はあるはずないけど、なんかぶつくさ言いながらしつこくその棚をあさっているカップルが、二人の男女が、世界がまだバラ色に包まれているうらやましい人種のペアーがおりました。
 邪魔臭い! 正確に言えばペアーが陣取っているのはその「読書用具売場」の棚の半分ほどで、もう半分はよく探すことができるのですが、そこが主にブックカバーとしおりばかりが置いてあるところで(この両者がただでさえマニアックな読書用具というジャンルのなかでとりわけ需要のある二つで、スペースが広く取ってあったのです)、そこにはブックストッパーがないことは一目でわかるのですが、早くどけ、お前ら!
「これ親指にはめて、ページを開きやすくするものなんだって。使いやすいのかな?」
「俺が親指だとしたらお前は人さし指、二人が揃ってないと物を持つことすらできないと思っているけどね」
「はなし きいてる?」
「そしていつかその薬指に俺の指輪をはめようと思っているけどね」
 なにこいつら、頭わる! もちろんさいさん申し上げております通り、この会話は僕の空想でしかなく、もしくは被害妄想的な空想がその時の記憶をひどくねじ曲げているのか、どちらかなのですが、ずーっと、おまえらなに探してんのか知らないけど、僕の探したい棚の前から動こうとしやがりません。
 つかぬことをうかがいますが、あなたがたの探し求めているお品物は、ここにはなく、コンビニの、端っこの方に恥かしげに鎮座している、コンドームというものが要り用なのではございませんでしょうか?
「ルーペだって。お父さんとかに買ってあげたら?」
「俺はお前の価値ほど大きく見えたものは、今だかつてないと思っているけどね」
「こすったら消えるボールペンだって。面白いね」
「俺とお前との思い出は、永遠に消えることがないけどね」
「はさみ買おうかな」
「俺とお前の仲を切り裂くやつはだれであろうと許さないけどね」
「ゴニョゴニョ」
「ゴニョゴニョ」
 ……。
 ……。
 やっとどっか行きました。
(続く)