神保町詳述

 神保町駅は降りたホームの両側の線路の向こうの壁に、積み上がった本のイラストが描かれています。
 実際古本屋で棚に入れる以外に、ビニール紐でくくられたりして積み上げられている雑然としたところもありますが、それは風情ではなく在庫過多です。
 地下鉄から地上口に出ると大きい十字路で、電機屋のあるコーナーの反対側に、ちょっと寂れた新刊書店があって、そこからメインの古本屋の流れが始まります。
 でもその新刊書店を過ぎてまず当たるのがディスクユニオンです。中古CDの店ですが、前にここで買ったエイフェックス・ツインの別名義であるポリゴン・ウィンドウの「サーフィン・オン・サイン・ウェーブズ」は、元の彼女に貸したっきり返ってこなくてまた買おうかと思っています。
 特に理学系を集めた古本屋や、地理歴史系を集めた古本屋など、その次に流れてきますが、僕には縁のない本ばかりです。
 この辺りで「ジョン・レノンの買ったメガネ」屋と、神保町総合案内という小屋に差し掛かります。
 そこを越えると僕が第一に目標にする「小宮山書店」があります。ここでかつて希覯本を買うこと数冊。なけなしのバイト代をはたいて買った小島信夫の「私の作家遍歴?」は、いまだに栞が真ん中の辺りをさまよっています。
 小宮山書店は店の入り口をちょっと裏に回ったガレージで、まさにガレージセールをやっていて「三冊まで五百円」なのですが、前ここで買った大江健三郎の「懐かしい年への手紙」の単行本は、最初の数ページ、読んだきりです。前作の登場人物とか、たしか出てきたので、後回しにしました。
 この日はここでもなにも買わなかったです。
 買ったのは、たしかここからもうちょっと行ったところにある、岩波文庫講談社文芸文庫平凡社ライブラリーなどのよく揃った新刊書店で、河出書房の雑誌「文藝」の最新刊なのですが、これは別に、近所のリブロにも売ってるもので、わざわざここで買うことはなかったと思います。
 それはここまでは道が真っ直ぐだったのが急に右に曲がっていくちょうどその曲がり口にある「三省堂書店」で買った講談社の文芸誌「群像」も同じことです。
 ただこの三省堂書店の三階にしつらえられている文具店がその日の本当の目的地で、ここに本のページをクリップで挟んで留められる「ブックストッパー」が、ネットの情報によると売っているはずでした。
 そのすぐ隣には「ジョン・レノンとは関係がない」眼鏡屋があって、しかも下の二階にはカフェがあって、ここは本当に本屋なのかと、目を疑うばかり。
 でもブックストッパーって、文具店のどのコーナーにあるのか? 事務用品? 違う。はがきを挟んで立てておく重りみたいのもあってそれがかなり仕組みが似てるけど、役割が全然違う。
 とみこうみしていると、「読書用品」みたいなコーナーがあって、まさにそれがジャストミート、本屋でついでにくれるようなのと違う金属製の栞とか、革製のブックカバーとか、置いてあります。
 しかしそこには、思わぬ敵が、潜んでいたのであった……。
(次回へ続く)