教習記録(1)

 さすがに二週間も走り通しならば痩せない方がむしろ不思議でまあゲソってきはしたのですが、ケツの肉まで減ってきて座ると座骨の部分がめっちゃ痛いんですね。
 申し遅れましたワタクシ、座骨の部分がめっちゃ痛いPさんです。「Pさんの文章、面白い!」というまあ見え透いたお世辞にPさんの濁った目は幻惑され惑乱され錯乱し倒錯し抜いてしまったので、調子に乗ってなんか書くことにしました。
 倒錯は元々でPさん毎日のようにウワゴトのように言っていますがかかとが剣山で出来た靴を履いたきれいな女の人に踏まれたい!
 踏まれたい!
 踏まれたい! のはどうでもいいんですけどPさんのドMはどうでもいいんですけど。
 せっかく話す機会はあったにも関わらずこないだ受けた自動車教習所であったいろんなことはスルーのままなんですね? そんなところから入りたいと思いますけど。
 教習所行く前はまあ悪い教官というものの噂をよく聞いたわけですが、それが嘘のように面白い教官ばかりでした。要するに事後声高に叫ばれるのは何でも悪い噂なんですね、悲しいことには。これを読んでるあなたも、何か悪い噂ばかり漏出させてはいないか、いいことがあったに関わらずそれは心のうちに秘めるにとどめていないか、内省してみるのもよい試みと言えるのではないでしょうか?
 話は逸れていきましたが、とにかく僕の場合はこの人やだなあって思った教官は自分が教わった十何人中の一人か、いて二人だったわけですね?
 そのいい人の中でも特に数人は、ひょっとして芸人としてやっていけるのではないかと思うくらい面白く、一時間の教習も短く感じさせ、挙げ句の果てにはこの人のように生きてみたい! と思わせるに十分な人すら、いました。
 今こそその最後の例であるAさんのことを語るべきとき? まだ早いんじゃないかな。Aさんは。とりあえず、FさんかKさんのことで、お茶を濁しとけばいいんじゃないの? Kさんも、よっぽどだで? いや、だからこそ、Aさんから行くべきだ。
 Aさん。あとで聞いた話ではもう三十を越えたということでしたがとてもそうは見えない、そして何となく軽いっぽい、いや軽いっぽいのはそう演じているのがそのしっかりした言葉の端々で分かるというそのことが嫌味に響いてこない、何より子煩悩で家族を大切にする長身のAさん。
 さっそくごちゃごちゃと説明が込み入りましたね。この人には一番はじめの学科、一回の路上教習、応急救護の実習、そして最後の2連チャンの学科で教わりました。
 その前に自分と一番最初に話した、生徒のS君についてゆうべきじゃないか? あいつはおしゃべりだから、勝手に話し出すだろうから、あとでいいよ。
 それでAさんのことですが、はじめの方の学科で、シートベルトの重要性とかについて話していました。その時の口調は、おおよそこんな感じだったと思います。
「うちの娘がね。うちの娘はめっちゃ頭良いんだけど。二歳だよ!? 二歳なのに、シートベルト自分でつけるの覚えたんだよ。
 でも自分じゃ付けらんなかったんだけど。チャイルドシート座らせたら、シートベルト指さして、コレって。で俺が付けてやると、おとなしく座ってるんだよ。
 でもみんながみんなこんなにおとなしくないからね。友達の子供なんか、どうしても嫌がるらしくて、パッと見たら、外してるの。それで仕方なくシートベルトなしで走るらしいんだけど。だからうちの子は嫌がらなくてほんとによかった。
 みんなもね、子供が出来た場合には、ちゃんと付けてやってね、チャイルドシート。」
 授業が始まる前には、「他の教官はどう言ってるかわかんないけど、俺は「ここが出る」って言うから。だって、「ここが大事ですよ」とか、長いじゃん。「ここ出る」って言ったら、四文字だよね」とも言っていました。
(続く)