かろやかに

 夕暮れを見ることはなかった。幻覚にしろ悠然と表れにしろ、徒歩で至るように歩くことは難しい、マイペースでね。
 後ろの席の客が優先的にチャンネルを変えた。羨ましくもないが、放っておくと瀰漫しかねない、コンビニ本を読む手を置いて、ラー油に持ち替えた。
 視点が急に目まぐるしく変わって、テレビの前にはガラス戸があって手が届かない位置に置かれている。ブラウン管の中に、限界な量、埃が堆積している。
 虹を見るのは今だ。
 結局、見るものを見たらあとは帰るだけで、バリアフリーの筈のスロープを、わざわざ通って、ここまで来たということ、らしい。