体温計について

 最近、自分でも唖然とするほど面白いことが思いつかない。面白いというのは別にそういうことじゃなく、何かが起こるという意味で面白く、そういう意味で何も起こらない。いや、何も起こらなくても何かが起こることを欲しているのだが、これは自分の中ではぜんぜん撞着じゃないのだが、とりあえず辞書が欲しいというところからはじめよう。
 電子辞書というのは、紙の辞書の上位互換のような顔をしているが、実は縮小版というか簡易版なのではないだろうか。どうあってもどうやっても電子辞書を使っていると単語の集合を一望することが出来ない。一望って、別に、仮想のことを申しているだけだが、指がタテヨコ高さを触知してイメージ出来るということ。その意味で仮想ではあるがアクチュアルだ。電子辞書も言ってしまえばサーキットに刻まれているという意味で実在なのだがアクチュアルではない。あるいはアクチュアルさが四分の一減だ。その程度のことでしかないが、それよりも、というのは形態のことなぞどうでもいいのだが語に関する有機的なつながりが触知されるもの。そういう、書物というと重たいがなんらかのシーケンス。そう、つらなりであれば形を持たなくてもよい。時針の振れる瞬間の機動音でも良い。リセットボタンを押すのはつまようじで押すのがよい。話が逸れた。最近の体温計は一瞬、というのは五秒でかなりな精度で計れるものが出てきたということだ。いや、それがおでこであるかワキの下であるかはこの際問わないでおこう。いいか、ワキの下というのは、かなりな精度で毛があるものなのだ。ワキ毛が剃れた。
 時計には毎秒一秒ずつ刻むべしと水晶の表面に刻まれているという。時間を解きほごしていけば空間だ。そのかわりそれは異様なくらい褶曲して密集する巨大な伽藍を構成していることがほとんどだ。いいか、ほとんどだ。