カエルの実験

 まるでその後目にするフランシス・ベーコンの絵そのもののような、カエルの解剖されたイラストをその日に見た。
(カエルの)足が電流に触れると反射的にちぢこめる運動は、まさしく脊髄の反射によって起こるのであり、脳の影響ではないということを示すために、カエルの脳をくり抜いて、人で言えば首のうしろ側の皮をピンで木の板に留めた上で、その足に電流を流すという実験だ。
「脳を」と言ったけれども実際には上顎から上をすっかりくり抜かれている為、まるでカエルの太い首の、そのままの太さに口を開けたようになっていた。
 それを見た時の恐怖は、ただ単に生物を切り刻むというところのみにあったのではないと思う。それは、もはや脳がないにもかかわらず、足が厳然と、まるでカエルが生きていた時と変わらず動かされている、というところにあったような気がする。
 このイラストは、僕が大好きでいつも開いていた、科学の百科辞典の一つのページに載っていた。だからといってこのイラストも気に入ったわけではなく、ここに到るとつい目が惹かれて動けないような心持になった。