鎌倉の日(5)

 滑川交差点から砂浜にかけて、扇状に広がる階段があり、その段の隅ごとに大量の砂が詰まっている。そこを降っていった。
 まず日についたのは、九月の始めということもあって、巨大な「海の家」の解体現場だった。夏が来るごとにここに建てなければいけないのだから、あるパーツパーツに分かれていて、それを持ち出すようなイメージを、事前に漠然と持っていたけれども、それは本当に、固定的に建てられた家を解体している光景と、少なくとも素人目には変らなかった。
 毎年、これほどしっかり建てておいて、それを惜しげもなく解体し尽くしてしまうのか。
 解体中の「海の家」は、他にも左右に点々と、大小入り混じってあった。
 いわゆる海水浴客も、その頃になれば、平日ということを差し引いてもずっと少なくなっていた。それでも、一時間も歩いていれば日焼けするくらいの、良い日差しだった。
 その海はもう、「海水浴場」として管理されてはおらず、海の中に区間を決めて見張っている人々も、そこから姿を消していた。
(つづく)