今日買った本

 こないだ入った初給料、貯金も半分くらい出来そうなところなので、自分へのごほうびに、たくさん本を買うことにした。
 たくさんといっても、たった三冊だけれども。それでも質量はバカにならないので、たくさんなんだけれども。

 どれも並じゃない、ここ何年もの時をまたいで興味を抱きつづけた作家なので、最新刊を味わえるというのがうれしい。
 僕は読書をはじめて間もない頃は、あっという間に好きな作家を最新作まで読んでしまって、「次」が出ないことにヤキモキしていた。なんの根拠もなく、「今ここでこの人の著作は終わって、もう出ないんじゃないだろうか」。だって、その「最新作」を以てして、全てを出し尽したはずだから。と思い込んでいた。
 しかし本物の作家は、生涯活動を続ける。普通に考えたら当り前のことだけど、それまで出し続けてきたように、それからも著書はつづく。僕はだんだん年齢を重ねてきたから、「まだか、まだか」が「もうか、もうか」になり、作家があたかも動いているように感じられることは、やっぱりうれしいことだと言わなければならない。
 ……でも、「最新作を味わえてうれしい」と言ったものの、二人とも、この二冊とも、ネット上に著した文章をまとめたものだ。これは偶然なのか、いや、やっぱり似た領域で似た活動を続けた作家の作品の形態が似てしまうのは、必然なんじゃないかと思う。
 ネットで、しかも無料で読めるようになっていた文章。なんで改めて本を買ったの? 単にお金をあげるつもりででもいるの?
 半分はそうかもしれないけど、半分は、やっぱり手元に活字があるのと、ないのとでは、僕の中では真剣に読めるかどうかの差が出てきてしまう。おまけに、『魚は海の中で眠れるが鳥は空の中では眠れない』の方は、『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』というエッセイ集が前にあったけど、それは白と黒だけを使ったびっくりするくらい単純な表紙だったけれども、『魚は……』の方はそれをさらに単純にしたような表紙だったので、それにまずひかれてしまったし、『「あの日」から……』の方も、日でインデックスを組んで、その頃発表した文章を全て羅列するという凝った形式にひかれてしまった。