カリンバ



カリンバ さば缶

カリンバ さば缶


 カリンバ。箱に鉄の棒が付いただけの至ってシンプルな楽器。音はオルゴールに似る。
 少し前からひそかに思っていたのが、はじめての給金でこれを買うこと。
(あの、サバ缶……?)
 しかし、このまえ本社研修に行ったついでに入った山野楽器で見てみたら、あらかじめ調べてわかってたことだけども、いわゆる「ドレミファソラシド」しか用意されてない。
 ピアノでいう「白鍵」しかなくて、「黒鍵」がない状態だ。
 これだと、トトロの「さんぽ」すら弾くことができない。
「坂道 トンネル 草っ原」のはじめの音が、ラ♭になる。まして僕は、メロディだけじゃなくて簡単な伴奏も含めて演奏したいと思っているので、これではトテモトテモ……。
(ところで、サバ缶……?)
 そういう要望があれば、やっぱり作られるもので、ネットで調べてみたら、とある楽器屋が細々と、クロマティックな(黒鍵まであるということ)カリンバを制作して売っていたり、「アレイ・ムビラ」という、一応仕組みはこのカリンバと同じだけども両手を軽く広げたくらいはあるドデカいものが、外国で作られたりしているらしい。
 でも手の平に収まらないカリンバなんて……。
 片手に収まるものもあったので、それが良さそうに見える。
 ただそれは制作所が福岡にあるって。どうしろと。通販はあるけれども。
 同じものが、中古品として出回っているということも、けっこうありそうだ。
(あのう、サバ缶……)
(シッ!)
 雨は明日まで降り続くらしい。明日は早番。五時に起きて六時までにはカッパをかぶって自転車をこがなければならない。こんな寒いのに湿気がすごく、うちの本は全部グニャグニャになっている。