くじら

 痒みの種類はいくつかある。
 蚊に刺されたときの痒みは、深奥で何かがうごめくみたいな不快な痒みで昔から苦手だ。
 一瞬だけ100℃近い例えばヤカンみたいなものを創部に軽く当てれば蚊が口から注入するよく「唾液」と言われている毒素の蛋白質を変質させて無毒化することによって痒みと炎症が収まるという話が「発掘! あるある大辞典」をはじめとする様々な「生活情報系」番組、クイズ形式であると否とに拘らず(しかし往々にしてそれはポイント制を用いない、「ピンポン」あるいは「へぇ~」等の実効性を持たないボタンを押すことによるクイズ形式であることが大多数である)、紹介されてきた。
 だが、加熱したヤカンが急に目の前にあるということは、現代あんまりない。
 これは、瞬時に水を加熱する電子ケトルの誕生によるものであろう。
 ヤカンでなくても、加熱されたものなら何でもオーケー。
 例えば、無煙タバコの加熱器。
 無煙タバコを吸う人が、急に目の前に現れることがある。
「発掘! あるある大辞典」は、ひとつの事件を起こして、その長大な番組の歴史を閉じた。
 その事件に関して纏めたファイルが、今、目の前にある。
 コーヒーの入ったぶ厚いマグカップを鉄製の白いブラインドにガシャガシャぶち当てる人がいる。